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- 亜硝酸態窒素と硝酸態窒素について解説!
水道法で規定されている飲料水水質検査には絶対に省略することができない、省略不可項目(11項目)という分析項目があります。飲料水水質検査の中で最も基本の項目となるので、ピックアップして解説を行っていきます。
今回のテーマは「 亜硝酸態窒素 と 硝酸態窒素 」です!
見た目や読み方はほとんど同じ…にもかかわらず、飲料水水質検査を行いますね。
お客様からは
◆ 亜硝酸態窒素と硝酸態窒素ってどんな物質なの?
◆ 亜硝酸態窒素と硝酸態窒素って何が違うの?
◆ 亜硝酸態窒素と硝酸態窒素は何で検査するの?
と、いうような内容の問い合わせがとても多く寄せられています。
そこで、少し専門的な部分も交えつつ、亜硝酸態窒素と硝酸態窒素について説明させていただきます。
少し難しく感じる部分があるかもしれませんが、しっかりと解説していきます!
◆ 亜硝酸態窒素と硝酸態窒素ってどんな物質なの?
亜硝酸態窒素と硝酸態窒素は、土の中や植物の中、飲料水を含めた水の中など様々な場所に広く存在しています。
水の中の亜硝酸態窒素や硝酸態窒素は、無機肥料や腐敗した動植物などに含まれる「窒素化合物」から由来しています。
窒素化合物は、土の中で微生物などの働きによって
アンモニア態窒素 → 亜硝酸態窒素 → 硝酸態窒素 → 窒素ガス
という流れで、形を変えていきます。
窒素ガスはそのまま大気中に放出され、一部の微生物などが栄養源としています。
硝酸態窒素は植物の栄養源となっていて、いずれはアンモニア態窒素となり、ぐるぐると大気や土の中などを循環していきます。
また、アンモニア態窒素は土とよく馴染むのですが、亜硝酸態窒素と硝酸態窒素は土とは全く馴染まないので、雨などの水に乗って地下水まで浸透していきます。そして、地下水はいずれ湧水として河川や井戸水として地上に現れ、私たちが飲料水の水源として利用しています。利用している水の中には微量ですが、亜硝酸態窒素と硝酸態窒素が含まれているので、灌漑用水などでまた土の中に戻っていきます。
◆ 亜硝酸態窒素と硝酸態窒素って何が違うの?
さて、亜硝酸態窒素と硝酸態窒素がどんな物質でどの様な形で身の回りに存在しているかを説明してきました。
しかし、実際には亜硝酸態窒素と硝酸態窒素がどう違うのか、その説明をするために化学の言葉を使ってみようと思います。
亜硝酸態窒素を化学の記号で示すと・・・
NO2-N
硝酸態窒素を化学の記号で示すと・・・
NO3-N
と、なります。
化学の記号に直しても、ほとんど同じですね。
では、それぞれの化学の記号は何を意味しているのでしょうか・・・
ざっくりと説明しますと
まず、“O”は酸素を示し、“O2”は酸素が2つ、“O3”は酸素が3つという意味になります。
次に、“N”は窒素を示し、“-N”はNO2やNO3に-Nがくっ付いているというイメージです。
最後に、“NO2”は亜硝酸、“NO3”は硝酸といいます。
す な わ ち ・・・
NO2-Nとは、“亜硝酸”のようにふるまっている“窒素”
==⇒ 亜硝酸態窒素
NO3-Nとは、“硝酸”のようにふるまっている“窒素”
==⇒ 硝酸態窒素
ということになります。
実は、大きな違いはこれだけで、これ以上もこれ以下もないのです。
◆ 亜硝酸態窒素と硝酸態窒素は何で検査するの?
亜硝酸態窒素と硝酸態窒素の違いはほとんどないことを説明しました。
では、どうして飲料水水質検査に亜硝酸態窒素と硝酸態窒素が含まれているのでしょうか?
ずばり、その理由は・・・
亜硝酸態窒素と硝酸態窒素には「 毒性 」があるからです。
厚生労働省の報告によると
亜硝酸態窒素と硝酸態窒素による健康影響として、「 メトヘモグロビン血症 」
という症状があります。
〇 メトヘモグロビン血症とは・・・?
メトヘモグロビン血症とは、血液中で酸素を運搬する役目であるヘモグロビンよりも酸素を運搬することのできないメトヘモグロビンの方が多くなってしまう症状のことを言います。
主な症状としては、チアノーゼが挙げられ、チアノーゼになると、唇や爪が鮮やかな赤ではなく、静脈血のような紫色となってしまいます。
血中のメトヘモグロビンが多くなってしまう原因は、亜硝酸態窒素や硝酸態窒素が多量に体内に吸収されることにあり、特に乳幼児での発症例が報告されています。
メトヘモグロビン血症の主原因が亜硝酸態窒素や硝酸態窒素であることから、飲料水水質検査の検査項目に含めることになっています。
厚生労働省は
1. 亜硝酸態窒素は硝酸態窒素へ化学変化すること
2. 亜硝酸態窒素と硝酸態窒素は地下水へ溶出しやすいこと
3. 亜硝酸態窒素と硝酸態窒素には毒性があること
という、3点とWHOによるガイドライン等を踏まえ、亜硝酸態窒素と硝酸態窒素の基準値を定めることで、より安全な水道水の供給に向けた水質管理の強化をすることにしました。
監修 : アムコン株式会社 分析事業部