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- 大腸菌についてくわしく解説!
今回は、「 大腸菌 」についてです。
大腸菌も一般細菌と同様、飲料水水質検査や食品細菌検査で検査される項目です。
今回は大腸菌について、
◆ 大腸菌とは?
◆ 大腸菌が基準値を超える原因は?
◆ 大腸菌が基準値を超えた場合の対策は?
以上の内容についてご説明していきます!
◆ 大腸菌とは?
大腸菌は、人や動物の腸管に存在している菌です。
一般細菌よりは、なじみのある菌かもしれません。
例えば、食中毒を起こす原因となる、腸管出血性大腸菌O-157は報道などで聞いたことがあるのではないでしょうか??生の牛肉やレバーの加熱不足などにより、感染が報告されることがありますね。
O-157や赤痢菌のように下痢等の症状を起こす「病原性大腸菌」は、最悪の場合死に至ることがある大変恐ろしい菌です。
では全ての大腸菌が病原性を持っているか?危険な菌なのか?というと、そうではありません。ほとんどが無害の菌なのです。
では、なぜ大腸菌を検査しなければいけないのでしょうか?
大腸菌は動物の糞便に含まれている代表的な菌のため、通常は水道水からは検出されません。万が一大腸菌が検出された場合は、その水が糞便により汚染されている可能性を示しています。
大腸菌の存在は糞便汚染の指標になるため、水道法で定期的に検査することになっています。大腸菌の水質基準値は水道法で、「検出されないこと」と定められています。
大腸菌は、検査する水を培地に混合して培養します。
実際に、大腸菌が検出された培地を見てみましょう!
このようにUVランプを当てて蛍光色に光った場合、その水には大腸菌が含まれていることになります。
大腸菌が検出された場合、検査結果は「不適合」となり、飲用には適していない水となってしまいます。
細菌汚染は、目に見えないものです。安全に水を使用するためには、定期的な水質検査をすることがとても重要です。
◆ 大腸菌が基準値を超える原因は?
水質検査の結果、大腸菌が水質基準値を超えてしまう原因には、どんなものがあるのでしょうか?
・汚水や異物などが混入した
・消毒設備の故障
以上のような原因が考えられます。
大腸菌が基準値を超えて検出された場合は、水が汚染されている恐れがあるため、飲用への使用を中止し、原因を調査する必要があります。
特にビルやマンション、床面積が3000平方メートル以上の特定建築物に該当する建物(学校の場合は、8000平方メートル以上)は、居住者の方や施設の利用者に大きな影響が出ることがありますので、早急な対応が必要となります。
◆ 大腸菌が基準値を超えた場合の対策は?
水質検査の結果、大腸菌が水質基準値を超えてしまった場合は、下記のような対策を行なってください。
<水道水の場合>
・貯水槽の清掃を年1回以上実施する
・残留塩素濃度を0.1mg/L以上に保持する
・貯湯温度を60度以上、給湯栓から55度以上の湯が出るようにする(給湯水の場合)
<井戸水の場合>
・飲用として使用している場合は、5分程度煮沸をしてから飲む
・消毒していない場合は、塩素滅菌装置を取り付ける
装置を取り付けている場合は、正常に稼動しているかと消毒剤の残量を確認する
・浅井戸は周囲の影響を受けやすいため、雨水や汚水が入らないような対策をする
上記のような対策をした後、水質検査を再度行ない、水質に異常がないことを確認してください。
< 実際にあった!水質汚染事故 >
H23年、あるホテルで使用している湧水から腸管出血性大腸菌O121が検出されました。
いつもは塩素を添加して消毒していましたが、事故が発生した当日は塩素を添加していませんでした。37人が感染、16人が軽い食中毒症状になりました。
井戸水や湧水などの水は、周りの環境によって水質が変化するため、消毒を怠ってしまうと、水質汚染によりこのような事故が起こることがあります。
大腸菌は、塩素に対する抵抗性が弱いため、通常の水道水で検出されることはほとんどありません。しかし、今回の事例のように消毒をしなかった場合や、消毒していても有機物等で汚染されている場合は塩素が消費され、消毒効果が弱まる場合もあります。
今一度、貯水槽の状態や消毒設備などをご確認いただき、適切な水質管理をお願いします!
監修 : アムコン株式会社 分析事業部